モロヘイヤの英語名は、「Molokhia」または「Mulukhiyah」といいます。
しかし、発音は「モロヒヤ」「ムルヒーヤ」に近く、日本語どおりに「モロヘイヤ」と発音してもなかなか通じません。そのうえ、「Egyptian spinach」「Jute mallow」「Jew’s mallow」など、さまざまな英語名があり、場面によって呼び方が異なるため、どれを使えばいいのか迷ってしまいます。
この記事では、モロヘイヤの英語名と発音、それぞれの意味と使い分けについて解説します。
モロヘイヤの英語の発音は?
日本語の「モロヘイヤ」も、英語の「Molokhia」「Mulukhiyah」も、アラビア語で「ムルーヒーヤ」あるいは「ムルキーヤ」と発音される名称に由来します。
英語の「Molokhia」は「モロヒヤ」、「Mulukhiyah」は「ムルヒーヤ」に近い発音です。「ヘイ」とは発音しないため、「モロヘイヤ」と日本語のまま言っても、英語圏では通じにくいようです。
発音のポイントは、どちらのスペルにも含まれる「kh」です。「k」と「h」を一文字ずつ読むのではなく、喉の奥で息をこするように発音します。日本語にはない音なので、人によっては「ヒ」にも「キ」にも近く聞こえます。
ちなみに、「Molokhia」「Mulukhiyah」とスペルが異なるのは、アラビア語をアルファベットで表記する際のルールが統一されていないからです。そのため、「Mulukhiyya」「Mulukhiya」「Molokhiyya」「Molohiya」など、さまざまな表記があります。
モロヘイヤの語源は「野菜の王様」?
モロヘイヤは、野菜の中でも特に栄養価が高いことから、「野菜の王様」と呼ばれることがあります。さらに、語源となったアラビア語は、「王様の野菜」を意味する言葉だという説もあります。
その説の根拠として語られているのが、モロヘイヤのスープを飲んで病気が治ったという古代エジプト王の伝説です。この出来事から、モロヘイヤのスープは「王家のスープ」と名付けられ、やがてモロヘイヤそのものが「王様の野菜」と呼ばれるようになったと伝えられています。
実際、アラビア語には「王たち(王の複数形)」を意味する「mulūk(ムルーク)」という言葉があります。言語学者であり、日本にモロヘイヤを広めた飯森嘉助氏も、アラビア語の「mulūk」と、ギリシャ語でゼニアオイ属の植物を表す「Malachi」を掛けあわせて、「Mulukhiyah」と名付けられたのではないかと述べています。
日本で「モロヘイヤ」という名前が広まったのは、飯森嘉助氏の功績です。1980年代に全国モロヘイヤ普及協会を設立し、栽培方法や食べ方とともにモロヘイヤを全国へ広めました。今では日本でも普通に食べられる野菜ですが、モロヘイヤが普及したのは意外と最近のことだったのですね。
モロヘイヤの英語名の違いと使い方
「Molokhia」「Mulukhiyah」以外にも、モロヘイヤには次のような英語名があります。
- Egyptian spinach
- Jute mallow
- Jew’s mallow
それぞれの違いと使い方を解説します。
Molokhia・Mulukhiyah
「Molokhia」と「Mulukhiyah」は、モロヘイヤそのものを表すだけでなく、モロヘイヤを使った料理の名前としても使われます。海外のレシピやレストランのメニューでは、モロヘイヤのスープや煮込み料理の名前として、「Molokhia」「Mulukhiyah」と書かれていることがあります。
Egyptian spinach
野菜としてのモロヘイヤを表すときに、「Egyptian spinach」という名前も使われます。直訳すると「エジプトのホウレンソウ」ですが、同じような例として、クウシンサイも「Chinese spinach(中国のホウレンソウ)」と呼ばれることがあります。
モロヘイヤもクウシンサイも、実際にはホウレンソウの仲間ではありません。それでも、「ホウレンソウに似たエジプト風の青菜」「中華料理でよく使われるホウレンソウっぽい青菜」という方が、どんな野菜なのかイメージしやすいのかもしれません。
Jute mallow
「Jute mallow」は、モロヘイヤを植物名として表すときによく使われる英語名です。植物図鑑や栽培方法の紹介ページなど見かけることが多く、ミネソタ大学の栽培案内でも、「Molokhia」の別名として「Jute mallow」が紹介されています。
「jute」とは、麻袋やロープなどの原料になるジュート繊維のことです。「mallow」はアオイ科の植物を意味します。モロヘイヤは食用だけでなく、茎から繊維を採る目的でも利用されてきたため、「Jute mallow」と呼ばれることもあります。
Jew’s mallow
「Jew’s mallow」も、モロヘイヤを植物名として表す英語名です。「Jute mallow」と似ていますが、「Jew’s」は「ユダヤ人の」という意味で、直訳すると「ユダヤ人のアオイ」になります。
エジプトやシリアなどのユダヤ人が、モロヘイヤを野菜として食べていたことから付けられた名前だといわれています。現在もキュー王立植物園などで、モロヘイヤの英語名として掲載されていますが、場合によっては差別的に受け取られる可能性があるため、「Jute mallow」を使う方が無難でしょう。
まだまだあるモロヘイヤの名前
このほかにも、モロヘイヤには次のような英語名があります。
- Nalta jute:ナルタ・ジュート(Naltaの語源は不明)
- Tossa jute:トッサ・ジュート(Tossaの語源は不明)
- Indian jute:インドのジュート
- Wild jute:野生のジュート
- Bush okra:背の低いオクラ
- West African sorrel:西アフリカのスイバ
さらに、モロヘイヤが広く食べられているアフリカでは、地域や言語によってさまざまな名前があります。
- Ewedu:ナイジェリアのヨルバ語
- Ayoyo:ガーナなどで使われる名称
- Lallo:ナイジェリアのハウサ語
- Kerenkere:ナイジェリアのイボ語
- Mlenda:タンザニアのスワヒリ語
- Mrenda・Murere:ケニアの一部で使われる名称
- Ninuwi:ベナンのフォン語
このように、モロヘイヤは世界中で食されており、地域や言語によって呼び名もさまざまです。日本でも「モロヘイヤ」のほかに、「タイワンツナソ(台湾綱麻)」「ナガミツナソ(長実綱麻)」「シマツナソ(縞綱麻)」といった別名があります。
最後に、モロヘイヤの学名は「Corchorus olitorius」です。「Corchorus」はツナソ属を表し、「olitorius」はラテン語で「野菜の」という意味があります。全体としては、「野菜として利用されるツナソ属の植物」といった意味になります。