モロヘイヤは、漢字で「縞綱麻」と表記されることがあります。
難読漢字クイズで出題されることも多いようですが、厳密には「縞綱麻」と書いて「モロヘイヤ」と読むわけではありません。「縞綱麻」はモロヘイヤの和名の一つであり、「シマツナソ」と読みます。ほかにも、「台湾綱麻(タイワンツナソ)」「長実綱麻(ナガミツナソ)」といった漢字で書ける和名があります。
中国語では、モロヘイヤを「長蒴黄麻」と書き、日本の和名とは異なる漢字が使われています。「エジプトの国王の野菜」を意味する「埃及国王菜」という別名もあるようです。
この記事では、モロヘイヤの漢字と別名について、和名・中国語名それぞれの意味や由来を解説します。
モロヘイヤは漢字でどう書く?
結論からいうと、「モロヘイヤ」という言葉そのものに、決まった漢字表記はありません。
「モロヘイヤ」は、アラビア語の名称に由来する外来語です。そのため、「珈琲」や「檸檬」のように漢字表記が定着している外来語とは異なり、普通はそのままカタカナで「モロヘイヤ」と書きます。
一方、難読漢字クイズなどでは、モロヘイヤの漢字として「縞綱麻」が紹介されることがあります。
ただし、「縞綱麻」と書いて「モロヘイヤ」と読むわけではありません。「縞綱麻」は「シマツナソ」と読み、モロヘイヤという言葉に漢字を当てたものではなく、この植物を表す和名の一つです。
現在では野菜の名前として「モロヘイヤ」が圧倒的に有名ですが、この植物自体は、モロヘイヤという名前が広まるよりもずっと前から日本に入っていました。
国立環境研究所のデータベースによると、モロヘイヤと同じ植物である Corchorus olitorius は、1867~1885年ごろ、食用または繊維作物として日本に持ち込まれたとされています。現在のように野菜として全国に広まった1980年代より、およそ100年も前のことです。
つまり、この植物は「モロヘイヤ」という野菜名が定着するよりも前に、食用や繊維用の植物として日本に入っていたことになります。
「モロヘイヤを漢字で書くと縞綱麻」というより、**「モロヘイヤには漢字で書ける和名がある」**と考えた方が正確です。
モロヘイヤの和名の意味と由来
モロヘイヤには、次のような和名や別名があります。
- タイワンツナソ(台湾綱麻)
- ナガミツナソ(長実綱麻)
- シマツナソ(縞綱麻)
農林水産省の品種審査基準では、モロヘイヤを「タイワンツナソ種」と表記しています。国立環境研究所のデータベースでは、「タイワンツナソ」「モロヘイヤ」「ナガミツナソ」が同じ植物の名前として掲載されています。
一方、「シマツナソ」は、資料によってモロヘイヤと同じ植物を指す場合と、別種を指す場合があります。この違いについては、後ほど詳しく見ていきましょう。
それぞれの漢字には、どのような意味があるのでしょうか。
ツナソ(綱麻)とは?
これらの名前に共通しているのが、「ツナソ」という言葉です。
「ツナソ」は漢字で「綱麻」と書きます。その名のとおり、茎から綱や麻袋などに使われる繊維を採れる植物です。
モロヘイヤは葉を食べる野菜として知られていますが、成長した茎からはジュート繊維を採ることができます。実際、日本へも食用だけでなく、繊維作物として持ち込まれたとされています。
食卓に並ぶモロヘイヤと、麻袋の原料になるジュートが同じ植物だと聞くと、少し意外に感じますね。
タイワンツナソ(台湾綱麻)
「タイワンツナソ」は、漢字で「台湾綱麻」と書きます。字面どおりに考えると、「台湾の綱麻」という意味です。
ただし、モロヘイヤの原産地が台湾というわけではありません。原産地については諸説ありますが、インドからアフリカにかけての熱帯・亜熱帯地域に広く分布する植物とされています。
なぜ日本で「台湾綱麻」と名付けられたのか、その詳しい経緯を示す確かな資料は確認できませんでした。現在は、農林水産省をはじめとする公的資料で、モロヘイヤの植物名として「タイワンツナソ」が使われています。
ナガミツナソ(長実綱麻)
「ナガミツナソ」は、漢字で「長実綱麻」と書きます。
こちらは名前の意味が分かりやすく、細長い実を付ける綱麻という意味です。
モロヘイヤを収穫せずに育て続けると、花が咲いた後に細長い円筒形の実ができます。普段は若い葉や茎を収穫して食べるため、家庭菜園をしていなければ、モロヘイヤの実を見る機会は少ないかもしれません。
私も家庭菜園で育てるまでは、モロヘイヤがこのような細長い実を付けるとは知りませんでした。植物名には、食用にする葉ではなく、実の形が残されているのですね。
シマツナソ(縞綱麻)
「シマツナソ」は、漢字で「縞綱麻」と書きます。
難読漢字クイズなどでは、この「縞綱麻」がモロヘイヤの漢字として紹介されることがあります。また、古い事典や植物園の資料では、モロヘイヤと同じ Corchorus olitorius の和名として「シマツナソ」を使用している例があります。
細長い果実の表面にある溝が縞模様に見えることから、「シマツナソ」と名付けられたのではないかという説もあります。
ただし、現在の植物名の扱いは統一されていません。
植物名データベースのYListに基づく資料では、モロヘイヤを「タイワンツナソ(Corchorus olitorius)」、シマツナソを別種の「Corchorus aestuans」として区別しています。
そのため、「縞綱麻はモロヘイヤの正式な漢字表記」と言い切るよりも、モロヘイヤの和名として紹介されてきた名前の一つと考えるのがよいでしょう。
モロヘイヤの中国語名の意味と由来
モロヘイヤは、中国語では主に「长蒴黄麻」と書きます。繁体字では「長蒴黃麻」です。
日本語ではほとんど見かけない「蒴」という難しい漢字が使われています。それぞれの漢字には、次のような意味があります。
- 长・長:長い
- 蒴:熟すと裂けて種子を出す「蒴果」を表す漢字
- 黄麻・黃麻:ジュート繊維を採る植物
つまり、「长蒴黄麻」は、細長い蒴果を付けるジュートという意味です。
実際、モロヘイヤは細長い円筒形の実を付け、成熟すると実が裂けて種子が出てきます。果実の形に注目した名前なので、日本語の「ナガミツナソ(長実綱麻)」とほとんど同じ発想で名付けられたと考えられます。
日本と中国でまったく違う名前を付けたというより、どちらも細長い実と、繊維を採れる植物であることに注目したのでしょう。
中国語名は一つではない
中国語圏でも、地域や用途によってモロヘイヤの呼び名が異なります。
台湾の植物情報データベースでは、「山麻」を主な名称として、次のような別名が掲載されています。
- 山麻
- 葉用長果黃麻
- 葉用黃麻
- 長蒴黃麻
- 埃及野麻嬰
「葉用黃麻」は、文字どおり葉を食用にする黄麻という意味です。繊維を採るためではなく、葉を野菜として利用する品種であることが、名前から分かります。
台湾の農業情報では、「埃及國王菜」という呼び名も紹介されています。直訳すると「エジプトの国王の野菜」です。モロヘイヤが「王様の野菜」と呼ばれてきたことを反映した名前なのでしょう。
日本ではアラビア語の名称を取り入れて「モロヘイヤ」と呼ぶようになりましたが、中国語圏では、実の形や利用方法などを表す漢字が名前に使われています。
同じ野菜でも、言語や地域によって注目する特徴が異なるのは面白いところですね。
モロヘイヤは英語でも別名が多い
モロヘイヤは英語でも、「Molokhia」「Mulukhiyah」「Egyptian spinach」「Jute mallow」など、さまざまな名前で呼ばれています。
料理名として使われるものもあれば、植物名や繊維作物名として使われるものもあり、場面によって呼び方が異なります。英語での発音や、それぞれの名前の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。