マヤ神話『ポポル・ヴフ』(7)キチェー王国の繁栄と系譜

 マヤ神話『ポポル・ヴフ』の内容を全7回に分けて紹介します。

 最終回の第7回目は、キチェー国がどのように他の部族たちを征服し、繫栄していったのかというお話です。最後に王の系譜も掲載されており、神話というよりは歴史書のようなものとなっています。

目次

すべての部族を征服

 人間が増えるにつれてたくさんの村が造られていき、バラム・キツェーら4人が開いた道にいろんな部族が集まってきました。4人はトヒールに生け贄を捧げるため、道を歩いている他の部族の者たちを捕まえて殺害。身元がバレないようにこそこそと殺戮を繰り返していましたが、他の部族の者たちもいい加減気づきます。バラム・キツェーたちを殺すことに決めました。

 他の部族の者たちは二人の乙女を、川で水浴びをしているトヒールのもとへ派遣しました。トヒールを誘惑して、ワンチャンさせようという作戦です。しかしトヒールは誘惑されることなく、乙女に絵を描いた布を渡しました。

 布は3枚あり、1枚目はジャガー、2枚目は鷲、3枚目は蜂がいっぱいに描かれていました。眼もまばゆいほどの布を見て、村の首長はさっそく着てみたくなりました。ジャガーと鷲の布はとても気持ちよくて、首長はぐるぐる廻ってはしゃぎます。続いて蜂の布を身にまとうと、描かれていた蜂がいっせいに襲ってきました。こうしてすべての村がトヒールに征服されたのでした。

 他の部族たちはまだ諦めませんでした。次の作戦は、待ち伏せして殺すという何の知恵もない方法です。あげくの果てに作戦がトヒールにバレてしまい、滅ぼされてしまいます。すべての部族が降伏し、バラム・キツェーたちは頂点に立ったのでした。

子孫たちによる統治

 やがてバラム・キツェーたちも死期を迎えました。3人の息子たちに東方へ行くよう遺言を残し、息子たちはその通りに東方へ向かいました。

 ナクシットという東方の王を訪ねると、彼はなぜか3人に王位を与えました。ハカヴィツという村へ行くと、なぜかあらゆる部族が集まり、3人に統治されることになりました。そうやっていろんな場所に行ってはそこを統治し、やがてチ・イスマチーという町へたどりつきます。彼らはこの地で勢力を広げ、第4代目の王の時には医師と石灰の建物を築造。コトゥハー王とイスタユールがイスマチーを統治しました。

 やがてイスマチーの町は放棄され、グマルカアフの町へ。コトゥハー王とグクマッツ王とすべての首長たちがこの地へやって来ました。国家が始まってから、すでに5代目の世です。彼らはこの地でたくさんの神殿を建設しました。

 第6代目の王は、ガグ・キカブとカヴィシマフという二人の大王でした。驚くべき天性を持っていて、偉大な仕事を成し遂げ、キチェー族を繫栄に導きました。

系譜

キチェーのカヴェック族の首長
  • バラム・キツェー:カヴェック家の根幹
  • クォカヴィブ:バラム・キツェーの第2代
  • バラム・コナチェー:第3代、アフポップの称号は彼から始まる
  • コトゥハーとイスタユール:第4代
  • グクマッツとコトゥハー:驚くべき王の初めで第5代
  • テぺプルとイスタユール:第6代
  • キカブとカヴィシマフ:第7代
  • テペプルとイスタユブ:第8代
  • テクムとテペプル:第9代
  • ヴァフシャキ・カアムとキカブ:第10代
  • ヴクブ・ノフとカウウテペチェ:第11代
  • オシブ・クエフとベレヘブツィ:第12代、ドナディウがやって来た頃の王で、スペイン人に絞殺された
  • テクムとテペプル:第13代、スペイン人に貢物を捧げてその子孫を残す
  • ドン・ファン・デ・ロハスとドン・ファン・コルテス:第14代、テクムとテペプルの子
カヴェックの9家族
  • アハウ・アフポップ
  • アハウ・アフポップ・カムハー
  • ニフ・チョコフ・カヴェック
  • アハウ・アフ・トヒール
  • アハウ・アフ・グクマッツ
  • ポポル・ヴィナック・チトゥイ
  • ロルメット・ケフナイ
  • ポポル・ヴィナック・パ・ホム・ツァラッツ・クスクセバー
  • テペウ・ヤキ
ニハイブ国の統治者
  • バラム・アカブ:最初の祖父であり、父である
  • クォアクルとクォアテック:第2代
  • コチャフッフとコチバハー:第3代
  • ベレヘブ・クエフ(Ⅰ):第4代
  • コトゥハー:第5代
  • バッツァー:第6代
  • イスタユール:第7代
  • コトゥハー(Ⅱ):第8代
  • ベレヘブ・クエフ(Ⅱ):第9代
  • クエマー:第10代
  • アハウ・コトゥハー:第11代
  • ドン・クリストーヴァル:スペイン人の時代になって統治
  • ドン・ペドロ・デ・ロブレス:現在のアハウ・ガレール
ニハイブ族の大家
  • アハウ・ガレール(Ⅰ)
  • アハウ・アフチック・ヴィナック
  • アハウ・ガレール・カムハー
  • ニマ・カムハー
  • ウチュチ・カムハー
  • ニム・チョコフ・ニハイブ
  • アハウ・アヴィリシュ
  • ヤコラタム
  • ニマ・ロルメット・イコルトゥシュ
アハウ・キチェーの王
  • マフクタフ
  • クォアハウ
  • カブラカン
  • ココソム
  • コマフクム
  • ヴクブ・アフ
  • コカメル
  • コヤバコフ
  • ヴィナック・バム
アハウ・キチェーの大家
  • アフチック・ヴィナック・アハウ
  • ロルメット・アハウ
  • ニム・チョコフ・アハウ
  • ハカヴィツ
3人のチョコフ
  • カヴェック族のニム・チョコフ
  • ニハイブ族のニム・チョコフ
  • アハウ・キチェー族のニム・チョコフ・アハウ

 今日、サンタ・クルスとよばれているキチェーの国の人々は、もうみな滅びてしまった。

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この記事を書いた人

『方丈記』に感銘を受けて古典文学にのめり込み、辞書を片手に原文を読みながら、自分の言葉で現代語に訳すことを趣味としています。2024年9月から10年計画で『源氏物語』の全訳に挑戦中です。

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