志賀の浦に漁する海人明け来れば浦廻漕ぐらし楫の音聞こゆ
『万葉集』の第15巻3664番歌は、天平8(736)年に新羅へと派遣された遣新羅使が歌った「海辺にして月を望みて作れる歌九首(第15巻3659 ~ 3667番歌)」のうちの一首です。第15巻3664番歌の原文・現代語訳・作者・万葉歌碑を紹介します。
天平八年丙子夏六月、遣使新羅國之時、使人等、各悲別贈答、及海路之上慟旅陳思作歌
并、當所誦詠古歌 一百四十五首
天平八年丙子の夏六月、使を新羅国に遣はしし時に、使人らの、各々別を悲しびて贈答し、また海路の上にして旅を慟み思を陳べて作れる歌
并せて、所に当りて誦詠せる古歌 一百四十五首
語釈
- へいし【丙子】:干支の組み合わせの13番目。西暦年を60で割って、余り16の年が丙子の年。
- しらき【新羅】:朝鮮半島東南部にあった三韓のうちの一国。
海邊望月作歌九首
海辺にして月を望みて作れる歌九首
語釈
- うみべ【海辺】:博多の海辺。
之可能宇良尒 伊射里須流安麻 安氣久礼婆 宇良未許具良之 可治能於等伎許由
志賀の浦に漁する海人明け来れば浦廻漕ぐらし楫の音聞こゆ
語釈
- しか【志賀】:現在の福岡市東区志賀島。
- うら【浦】:海辺。海岸。
- かぢ【楫・梶・舵】:船を漕ぐ道具。
志賀の浦で漁をする海人は、夜が明けてくると海岸を漕いでまわるらしく、船を漕ぐ音が聞こえる。
遣新羅使(作者未詳)
万葉歌碑の所在地
場所:潮見公園展望台
住所:〒811-0323 福岡県福岡市東区志賀島968−1