マヤ神話『ポポル・ヴフ』(1)木製人間の創造と破壊

 マヤ神話『ポポル・ヴフ』の内容を全7回に分けて紹介します。

 第1回目は神話のお決まりともいえる、世界創造のストーリー。空と海だけが広がる暗闇と静寂の世界で、神々は大地を創造し、動物を創り、人間を創ります。しかし、人間は失敗作に終わり、洪水を起こして流し去ることに⋯⋯。

カモ

これまたお決まりのパターンかも

目次

カニもいない世界

 人間はまだ一人もいなかった。獣も、鳥も、魚も、カニもいなかった。木も、石も、洞窟も、谷間も、草や森もなく、ただ静かな海と、限りなく広がる空だけがあった。

カモ

カニ⁉

 

光り輝く神々による大地の創造

 そんな暗闇の世界で、光り輝く神々がいました。「テペウ」と「グクマッツ」です。マヤ語でテペウは「王」、グクマッツは「翼を持つ蛇」を意味します。

 テペウとグクマッツは「言葉」を生み、暗闇の中で「創造」について語り合いました。そして二人が、

「大地!」

 と叫ぶと、水の中から大地が現れ、山々と谷間が造られました。

カモ

グクマッツは「ククルカン」とも「ケツァルコアトル」とも呼ばれるかも

犠牲の運命を背負わされる動物たち

 次に、神々は動物を創造しました。しかし、動物たちは言葉を話すことができず、ただ鳴きわめくばかり。神々の名を呼ぶこともできません。自分たちを崇めてくれる存在が欲しかった神々は、動物たちにこう告げます。

 お前たちは食糧を求めて一生森をさまよってろ。お前たちの肉はミンチにされて食べられてしまうだろう。それがお前たちの運命だ。

 こうして動物たちの運命が決まりました。

カモ

えっ⁉

自身の失敗を暴力で消そうとする神々

 神々はいよいよ、人間の創造に取り掛かります。しかし泥土で造った人間は、すぐに崩れてしまう失敗作。そこで「イシュピヤコック」と「イシュムカネー」という老夫婦に相談し、今度は木で人間を造ることにしました。

 木で造った人間は生殖能力があり、地上に増えていきました。しかし、四つ足で意味もなくさまようことしかできず、神々を崇められるような知恵もありませんでした。失望した神々は木の人間たちをぶっ壊し、洪水を起こして流し去ろうとします。

 でも木の人間たちは絶滅しませんでした。洪水を生き延びた木の人間たちは、眼をえぐり取られたり、顔をかみ砕かれたりと、さらに過酷な暴力を受けながらも、森へと逃げ隠れます。そうして生き残った木の人間の子孫が、今も森の中にいる猿なのです。

カモ

『ポポル・ヴフ』は暴力の描写がしんどいかも

【次回】ヴクブ・カキシュ一家殺害事件

 結局まだ人間は誕生していませんが、急に話が飛ぶのが『ポポル・ヴフ』の得意技です。フンアフプーとイシュバランケーという双子の神が、ヴクブ・カキシュという傲慢な男を一家もろとも 殺害 退治する話に移ります。

 ヴクブ・カキシュは確かに世界征服をたくらむ傲慢な男ではあるのですが、その妻は特に悪いことをしていないようですし、二人の息子もそんなに悪い奴とは思えません。むしろ双子の神のやり方が陰気臭いというか、はっきり言って汚いです。

 胸糞注意。乞うご期待!

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この記事を書いた人

『方丈記』に感銘を受けて古典文学にのめり込み、辞書を片手に原文を読みながら、自分の言葉で現代語に訳すことを趣味としています。2024年9月から10年計画で『源氏物語』の全訳に挑戦中です。

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