グリセリン脂肪酸エステルの危険性は?健康への影響と安全性

グリセリン脂肪酸エステルとは、その名の通りグリセリンと脂肪酸がエステル結合したもので、食品添加物としては乳化剤や消泡剤などの用途で使われています。

食品衛生法に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めた指定添加物の一つで、安全性が認められている食品添加物です。

しかし、グリセリン脂肪酸エステルには、農薬としても使用される「ポリグリセリン脂肪酸エステル」や「グリセリンクエン酸脂肪酸エステル」なども含まれています。

殺虫剤にもなるような物質となると、口に入れても本当に安全なのか心配ですよね。

そこで、グリセリン脂肪酸エステルに危険性はないのか調べてみました。

グリセリン脂肪酸エステルとは

グリセリン脂肪酸エステルの原料と製造方法

グリンセリン脂肪酸エステルは天然の油脂に含まれている成分ですが、工業的にはグリセリンと脂肪酸をエステル化させることで製造されます。

グリセリンには「天然グリセリン」と「合成グリセリン」の2種類があり、天然グリセリンの原料はヤシ油やパーム油、合成グリセリンの原料は石油です。

成分表示はどちらも「グリセリン」と表示されるため、天然か合成かを判断することはできません。

ただ、天然グリセリンを使用していれば「植物由来」などとアピールすると思いますので、何も書いてなければ石油由来の合成グリセリンと思っていいでしょう。

エステルとは、酸とアルコールから水分子を離脱させる脱水縮合によって作られる化合物です。

水に溶けにくく、アルコールなどの有機溶媒には溶けやすいという性質があります。

グリセリン脂肪酸エステルの主な用途

グリセリン脂肪酸エステルの主な用途は、「乳化剤」と「消泡剤」です。

乳化剤とは、混ざりにくい水と油を均一に混合するための添加物で、マーガリンやマヨネーズ、アイスクリームやカレールーなどにさまざまな加工食品に使用されています。

乳化剤には「レシチン」や「カゼインナトリウム」などもありますが、数種類添加されていても「乳化剤」と一括で表示できるため、何が何種類含まれているのかはわかりません。

消泡剤とは、その字が示す通り、泡を消すための添加物です。

例えば、豆腐の製造過程で豆乳を作る際、大豆を煮沸すると泡が発生しますが、消泡剤を入れることで泡を消すことができます。

泡を消すことで豆腐の中の隙間がなくなり、食感が良く見た目もきれいな豆腐に仕上がるというわけです。

グリセリン脂肪酸エステルの安全性は?

グリセリン脂肪酸エステルは、食品衛生法第12条に基づいて、厚生労働大臣の指定を受けた「指定添加物」であり、安全性に問題はないとして使用が認められています。

生協によって異なる基準

Googleで「グリセリン脂肪酸エステル 安全性」と検索すると、「生活協同組合コープこうべ」のページが出てきますが、そのページにはこのように書かれています。

食品添加物自主基準では、グリセリン脂肪酸エステルは「安全性上の指摘がない」として、使用された食品の取り扱いの制限をしていない食品添加物です。

引用:豆腐などに使われている『グリセリン脂肪酸エステル』とはなにか?|その他|商品Q&A|コープこうべ 商品検査センター

食品添加物自主基準というのは、コープこうべが自主的に定めた基準であり、安全と言われる食品添加物であっても、独自に検査した上で使用するかどうかを判断しているようです。

そのため、グリセリン脂肪酸エステルはまったく危険性がないように思えますが、同じ生協でも「ナチュラルコープヨコハマ」では「基本的に使用不可」とのこと。

プロピレングリコール脂肪酸エステルは強い毒性の疑いがあるため「使用不可」とし、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルは「基本的に使用不可」とします。ただし、加工品の一部に使われるクリーム類等への微量使用、チーズへの微量使用は、使用を減らしていくように努力していくこととしますが、商品説明文に使用を掲載し、表示することとします。

引用:食品添加物基準|神奈川の生協 生活協同組合ナチュラルコープヨコハマ

どのような理由で「基本的に使用不可」となっているのかはわかりませんが、「絶対に安全とは言えない」と判断したということでしょう。

このように生協によって基準が異なりますが、コープこうべでも検査した上で安全と判断しているわけですから、グリセリン脂肪酸エステルの安全性は高いと言えそうです。

食品安全委員会の評価

一口にグリセリン脂肪酸エステルと言っても全部で18種類もあるそうで、成分表示を見ただけではどの物質が使われているのかを知ることはできません。

中には農薬としても使用される「ポリグリセリン脂肪酸エステル」や「グリセリンクエン酸脂肪酸エステル」も含まれており、こちらは安全性が気になるところ⋯⋯。

これら二つの物質については、内閣府に設置されている食品安全委員会の評価書がありましたので引用します。

ポリグリセリン脂肪酸エステルの安全性

ポリグリセリン脂肪酸エステルが食品添加物として認可されたのは、1981年のこと。

長く使用されている添加物ですが、40年以上前と今とでは基準も検査方法も異なります。

食品添加物の歴史は長く、このように何十年も前に認可されて以来ずっと使われ続けている物質も多いです。

再評価した結果、危険性ありと判断されて突然使用中止になる物質もあるので、国が認めているから安全とは言い切れません。

ポリグリセリン脂肪酸エステルについては、2015年に農薬として使用する場合の食品健康影響評価がされており、以下の通りに評価されています。

各種毒性試験の結果から、ポリグリセリン脂肪酸エステル投与による影響は高用量投与により肝臓及び腎臓の重量の増加並びに尿中窒素の増加が認められたのみである。
また、食品添加物として使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルが農薬として使用された場合、その使用により生ずる作物残留によって、通常の食生活において食品から摂取しているポリグリセリン脂肪酸エステルの量を増加させる可能性は極めて低いと考えられる。
以上のことから、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、農薬として想定しうる使用方法に基づき通常使用される限りにおいて、食品に残留することにより人の健康を損なうおそれのないことが明らかであると考えられる。

引用:ポリグリセリン脂肪酸 エステル – 厚生労働省

「人の健康を損なうおそれのないことが明らか」ということですが、気になるのは最初の一文。

各種毒性試験の結果から、ポリグリセリン脂肪酸エステル投与による影響は高用量投与により肝臓及び腎臓の重量の増加並びに尿中窒素の増加が認められたのみである。

「のみ」と書かれていますが、肝臓及び腎臓の重量が増加って、肥大化するってことですよね⋯⋯。

「高用量投与により」ということですので、少しぐらいは摂取しても問題ないとは思いますが、できるだけ避けた方がよさそうです。

グリセリンクエン酸脂肪酸エステルの安全性

グリセリンクエン酸脂肪エステルについても、2017年に同様の評価書が出されています。

各種毒性試験の結果から、グリセリンクエン酸脂肪酸エステルの食品を経由した暴露により問題となる毒性所見は認められなかった。
食品添加物として使用されるグリセリンクエン酸脂肪酸エステルが農薬として
使用された場合、その使用により生ずる作物残留によって、通常の食生活において食品から摂取しているグリセリンクエン酸脂肪酸エステルの量を増加させる可能性は低いと考えられる。
以上のことから、グリセリンクエン酸脂肪酸エステルは、農薬として想定しうる使用方法に基づき通常使用される限りにおいて、食品に残留することにより人の健康を損なうおそれのないことが明らかであると考えられる。

引用:グリセリンクエン酸 脂肪酸エステル – 厚生労働省

こちらは毒性所見は認められなかったとのことで、ポリグリセリン脂肪酸エステルよりは安全そうです。

ただ、グリセリンクエン酸脂肪酸エステルも農薬として使用されているわけで、アブラムシ類やハダニ類の気門を封鎖して窒息させる効果が確認されているとのこと。

私は家庭菜園で野菜を育てているのですが、アブラムシってそう簡単には死なないんですよね。

唐辛子を焼酎に漬けて作る自然農薬で対処しようとしたことはあるんですが、ほとんど効きませんでした。

そのアブラムシを殺虫できる物質なんて、やはり口に入れたくないですよね。

【結論】消泡剤を使っている豆腐は避けよう

グリセリン脂肪酸エステルは安全な食品添加物とされていますが、危険性がゼロではなさそうです。

様々な食品に使用されているため、私もこれまでに相当な量を摂取してきたと思いますが、できるだけ避けたいところです。

とは言え、グリセリン脂肪酸エステルをまったく摂取しないというのは不可能でしょう。

避けられる範囲で、少なくとも豆腐は消泡剤が使われていないものを選びたいです。