化粧品や日焼け止め、食品やサプリにも使用されている酸化チタン。
発がん性の疑いがあると言われている物質で、厚生労働省の資料にも「ヒトに対する発がん性が疑われる」とはっきり書いてあります。
欧州連合(EU)では食品添加物としての使用が禁止されているほど。
肌に塗ったり、口に入れたりしても危険性がないのか心配になりますよね。
そこで、酸化チタンの発がん性について深掘りし、酸化チタンが含まれている化粧品や食品に危険性はないのか調査しました。
酸化チタン?二酸化チタン?どっちが正解?
まずは言葉の整理から。
「酸化チタン」と「二酸化チタン」、この二つは呼び方が違うだけで、物質としては同じです。
組成式はどちらも「TiO2」。
「Ti(チタン)」に「O(酸素)」が二つなので、「二酸化チタン」の方が正解な気がしますが、「酸化チタン」と呼ばれることの方が多いようです。
また、「微粒子酸化チタン」と表記されることもあります。
Googleでの月間検索回数は、「酸化チタン」が8,100回、「二酸化チタン」が3,600回と、酸化チタンの方が2倍以上(2023年6月23日時点)。
そのため、この記事でも「酸化チタン」と呼ぶことにします。
酸化チタンの発がん性について
吸入による発がん性が疑われる
「酸化チタン 発がん性」で検索すると、厚生労働省の「酸化チタン (Ⅳ)の健康障害防止措置について」という資料が出てきました。
こちらの資料を見てみると、「ヒトに対する発がん性が疑われる」とはっきりと書いてあります。
ただ、資料を読み進めると、「吸入による健康障害のおそれがある」とは書いてありますが、経口による健康被害については触れられていませんでした。
酸化チタンという物質そのものと言うより、「ナノ粒子」としての危険性が指摘されているようです。
ナノ粒子やマイクロプラスチックなどの細かい粒子は、物質自体が無害だったとしても肺や気管支に影響します。
「ヒトに対する発がん性が疑われる」とされているのは、酸化チタンそのものの毒性ではなく、粒子が細かいことが原因のようです。
経口摂取では実質的に無害
厚生労働省の「有害性総合評価表」という資料を見ると、「経口摂取された二酸化チタンは実質的に無害と考えられている」とあります。
出典:有害性総合評価表
続きを読むと、「1ポンド(450g)の二酸化チタンを経口摂取した場合も影響は無く、24時間以内に糞中に排泄された」とのこと。
食べても吸収されずに出たため、「実質的に無害」という表現なのでしょう。
結局は「1例のみであり判断できない」と、酸化チタンのヒトに対する発がん性や毒性については「わからない」というのが見解のようです。
しかし、この資料を読み進めていくと、ラットに対する実験結果を見ることができます。
それによると、「ラットに二酸化チタンを経口投与した場合の致死量は 20 g/kg であった」とのこと。
出典:有害性総合評価表
体重1kg当たり20gですから、体重60kgのヒトに単純換算すると1,200g。
そりゃあ金属の粉を1.2kgも食べれば死んでもおかしくないでしょう⋯⋯。
以上、厚生労働省の資料を見る限りでは、酸化チタンは大量に食べない限り危険性はなさそうです。
食品添加物として使用されるのはごくわずかな量でしょうから、そこまで気にする必要はないのかもしれません。
欧州では食品添加物としての使用を禁止
しかし、欧州連合(EU)では、酸化チタンは食品添加物としての使用を禁止しています。
しかも割と最近のことで、禁止されたのは2022年8月8日から。
EUで8月8日から、二酸化チタン(TiO2/E171)を食品に添加することが全面的に禁止された。食品添加物に関する規則(EC)1333/2008の付属書IIとIIIを改正し、二酸化チタンを禁止する規則(2022/63)に基づくもの。同規則は2022年1月18日にEU官報に掲載され、2月7日に施行された。
改正前の規則に基づいて製造された二酸化チタンを含有する食品は8月7日までEU域内への市場投入ができ、記載された賞味・消費期限まで販売できたが、8月8日以降は市場投入ができなくなった。実質的に少量の着色料としても使用ができなくなった。
二酸化チタンの安全性については、欧州食品安全機関(EFSA)が2021年5月6日に公表した科学的意見書で「入手可能なあらゆる証拠に基づき、遺伝毒性(Genotoxicity)の懸念を排除することはできず、多くの不確実性を考慮し、二酸化チタンを化学物質として使用する場合、安全と見なすことはもはやできない」と結論付けていた。
引用:EU、8月8日から食品への白色着色料の二酸化チタンの添加禁止(EU、フランス) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ
このニュースのリンク先にある「欧州食品安全機関(EFSA)が2021年5月6日に公表した科学的意見書」を読むと、
- 酸化チタンの一般的な毒性影響の証拠は決定的ではない
- 利用可能な科学的証拠をすべて検討した結果、 遺伝毒性の懸念を排除できない
とのこと。
遺伝毒性とは、DNA(遺伝子や染色体)に変化を与える性質のこと。
遺伝子の突然変異によって発がんすることもありますので、遺伝毒性があるということは発がん性があるとも言えます。
その懸念を排除できないということなので、確実に悪影響があるとは言えないが、安全だとも言い切れないということでしょう。
【結論】酸化チタンを避けるに越したことはない
結局のところ、酸化チタンに発がん性や危険性があるかどうかは、はっきりとしたことはわかりません。
でも安全だと言い切れない以上、酸化チタンを避けるに越したことはないですね。
添加物としての酸化チタンは、主に発色をよくするために使われます。
アイスクリームやホワイトチョコレート、歯磨き粉や化粧品、医薬品やサプリなど、見た目を白くするためです。
つまり、酸化チタンを使わなくても、味や効能など本来の品質は変わらないのです。
口に入れる食品やサプリは特に、酸化チタンが使われていないものを選びたいですね。
酸化チタンが使われている化粧品の危険性
酸化チタンはその白の発色性から、多くの化粧品に使われています。
単純に白い粉を塗ったら肌が白くなるというわけです。
また、紫外線をカットする効果もあると言われており、日焼け止めにも多用されています。
肌に塗るだけであれば口に入ることもないので、特に危険性はないように思われます。
EUでの規制も食品に対してのみで、化粧品には適用されていません。
ですが今、「ナノ材料(ナノマテリアル)」が使われているナノ化粧品について、米国やEUで安全性に関する調査が進められています。
ナノは10億分の1を表す単位。
ナノ化粧品は、美容成分をごく微小にすることで肌の奥まで届き、本来の美容効果を期待できるというメリットがあります。
その一方で、酸化チタンのような無機物も身体の中へ浸透してしまうため、それによる悪影響も懸念されているのです。
日本化粧品工業会でも2004年からナノマテリアルに関する調査・研究を進め、このような報告書を定期的に発表しています。
今のところは特に大きな健康被害は報告されていないようですが、酸化チタンのような遺伝毒性の懸念がある物質は、調査に長い年月がかかることでしょう。
いずれにしても、身体の奥まで浸透するということは、経口摂取よりも直接的に成分が入り込むということ。
肌に塗る化粧品や日焼け止めも、できるだけ酸化チタンが含まれていないものを選びたいですよね。
とは言え、酸化チタンは本当に多くの化粧品に使われていて、50,610件もの市販化粧品が登録されています(2023年6月23日時点)。
出典:酸化チタン(化粧品):Cosmetic-Info.jp
そのため、酸化チタンが使われていない化粧品を探すのも難しいかと思います。
酸化チタンが含まれていない化粧品を見つけても、他にもっと危険性のある成分が使われているかもしれません。
成分表示を確認することは大切ですが、あまり神経質になりすぎてストレスを感じるのも良くないでしょう。
そもそも、50,610件もの商品がありながら、今まで問題視されてこなかったわけです。
「酸化チタン = 悪」と決めつけず、ちょっと気にしてみるぐらいの心持ちで良いのではないかと思います。
酸化チタンが使われている食品はほとんどない
化粧品や医薬品、錠剤のサプリではよく使われている酸化チタンですが、食品添加物としては今はほとんど使われてなさそうです。
スーパーで酸化チタンが含まれてそうな加工食品やお菓子を探したんですが、見つけられたのはこれだけ。
業務スーパーにあったタイのインスタントラーメンです。
成分表示を見ると、ばっちり着色料として二酸化チタンが含まれています。
でもこれ、美味いんですよね(笑)。
他にもヤバそうな添加物盛り盛りですけど、ちょっとぐらい食べたって死にませんし、美味しく頂きます(笑)。