お米の精米改良材、生めんの品質改良剤、化粧品の保湿剤など、色々な用途で使われているプロピレングリコール(PG)。
天然に存在するものではありませんが、毒性が低く、人体への影響もほとんどないと言われており、日本では「指定添加物」に分類されています。
指定添加物とは、天然、合成に関わらず、安全性が高いと国が認めたものです。
そのため、プロピレングリコールには発がん性や危険性はないものと思われます。
が、そうは言っても添加物。しかも、石油由来の合成物質で、天然には存在しない⋯⋯。
本当に毒性がないのか気になりますよね。
そこで、プロピレングリコールの安全性について、発がん性や毒性がないのか調べました。
プロピレングリコールとは
プロピレングリコールは、酸化プロピレンという物質を水和させることで作られます。
プロピレンは石油製品のナフサを熱分解する過程で得られる物質。
つまり、プロピレングリコールは石油由来の合成物質。プラスチックが液化したようなものです。
英語の「Propylene Glycol」を略して「PG」と表記されたり、「1,2-プロパンジオール」と呼ばれたりもします。
プロピレングリコールは粘り気のある液体で無色透明。臭いも味もありません。
特長は水に溶けやすく、精油や樹脂、香料などあらゆる物質をよく溶かすこと。
発がん性や毒性はほとんどないとされ、食品や化粧品などに様々な用途で使用されています。
プロピレングリコールの用途
精米改良剤
精米改良剤とは、古米を割れにくくしたり、古米独特の臭いを消したり、新米のような光沢を付けたりするために使用される添加物です。
その精米改良剤に含まれているのがプロピレングリコールで、古いお米が白くて光沢のあるお米に変わります。
見た目を良くしたい売る側にとっては好都合でしょうが、液体プラスチックでコーティングされた「プラスチック米」なんて食べたくないですよね⋯⋯。
品質改良剤
プロピレングリコールには保湿作用があり、その性質を利用して生麺や餃子の皮などの品質改良剤としてもよく使われています。
プロピレングリコールを添加することで、しっとりとした食感になるそうです。
その保湿作用を活かして、食品だけでなく化粧品の保湿剤としてもよく使われています。
防腐剤
プロピレングリコールには細菌の増殖を抑制する静菌作用があるため、防腐剤としての役割もあります。
賞味期限が長くなることは食品ロス削減につながりますので、プロピレングリコールが無害であるなら良い使用方法ですね。
防腐剤としては食品だけでなく、シャンプーや化粧水などにも使われています。
軟化剤
プロピレングリコールはお肉を柔らかくする軟化剤としても使われています。
他の物質を浸透しやすくする性質もあり、唐揚げなどの味を染み込みやすくする作用もあるそうです。
香料・着色料
プロピレングリコールには、精油や樹脂など様々な物質を溶かす性質があります。
その性質を利用して、香料や着色料の溶剤としても使われています。
2023年6月27日に沖縄県名護市の工場からプロピレングリコールが海に流出する事故がありましたが、その時に海が赤く染まったのは食紅で着色されていたからです。
冷却水
プロピレングリコールは凝固点が水よりも低いため、車のエンジンを冷却するクーラント液としても使われています。
名護市での事故で流出したプロピレングリコールも、工場の冷却水として使用されていたものです。
赤く着色されていたのは、普通の水と冷却水とを見た目でわかるようにするためでしょうか。
成分表示を見てもわからない
このように、プロピレングリコールは様々な用途で使用されており、何らかの目的で多くの加工食品に添加されています。
しかし、成分表示を見ても、プロピレングリコールと記載されていることはあまりありません。
その理由は、「一括名表示」が認められているから。
同じ目的のために複数の添加物を使用した場合、「軟化剤」、「香料」というように一括表示できると食品衛生法で定められているのです。
一口に「香料」と言っても、何種類もの食品添加物が使用されている可能性があります。
香料や着色料などは品質を良くするのではなく、品質をごまかすためのものです。
できるだけそのような添加物が入っていないものを選びたいですね。
プロピレングリコールの発がん性・毒性
プロピレングリコールは「指定添加物」に分類されています。
指定添加物とは、食品衛生法第12条に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物のこと。
食品安全衛生委員会による安全性の評価を受けた上で指定されており、プロピレングリコールは安全性に問題はないと言えます。
しかし、プロピレングリコールの原液は危険有害性があるとされており、取り扱う際には保護具が必要なほど。(参考:製品安全データシート|三協化学株式会社)
食品添加物として使用される際はかなり薄まっているため毒性が低いとされているのでしょうが、まったくの無害というわけではなさそうです。
プロピレングリコールの発がん性
プロピレングリコールの発がん性について、環境省の『化学物質の環境リスク評価』を見ると、「IARC の発がん性評価:評価されていない。」と記載されています。
IARCとは「International Agency for Research on Cancer(国際がん研究機関)」のことで、発がん性物質がリストでまとめられています。
そのリストの中にプロピレングリコールが入っていないため、「評価されていない(=わからない)」ということでしょう。
ただ、IARCのリストにはプロピレングリコールの原料である「酸化プロピレン」は載っており、「グループ2B」に分類されています。
出典:List of Classifications – IARC
グループ2Bは「Possibly carcinogenic to humans(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)」とされる物質です。
酸化プロピレンについては、厚生労働省の「詳細リスク評価書」にも発がん性についての記載があり、米国毒性プログラム(NTP)の試験データが引用されています。
ラットに200、400ppmの濃度で、6時間/日×5日/週×103週間ばく露させた実験では、雌の400ppm群で鼻腔の乳頭状腺腫の発生率が有意に増加しており、吸入により鼻腔等への発がん性が確認された。
引用:詳細リスク評価書
このことから、酸化プロピレンについては発がん性がないとは言えなさそうです。
プロピレングリコールは酸化プロピレンを水和させた物質ですので、同じように「ヒトに対して発がん性の可能性がある」と考えるのが妥当かと思います。
プロピレングリコールの毒性
プロピレングリコールの毒性については、先に見た環境省の『化学物質の環境リスク評価』に次のように記載されています。
眼を刺激し、眼に入ると発赤、痛みを生じる。長期または反復して接触すると、皮膚が感作されることがある 。
引用:化学物質の環境リスク評価 第6巻
プロピレングリコールが添加された食品を食べる際に眼に入ることはないと思いますので、眼への影響は気にしなくていいでしょう。
皮膚の発赤については、化粧品を使う際に心配ですね。
ただ、どんな化粧品でも自分の肌に合う合わないはありますので、パッチテストをきちんと行えば問題ないでしょう。
食品にしても化粧品にしても、プロピレングリコールそのものを扱うわけではありませんので、毒性についてはそこまで気にする必要がないかと思います。
【結論】香料・着色料は避けよう
プロピレングリコールについては、発がん性の可能性はあるものの、食品添加物として接種する程度であれば毒性もそれほど気にする必要はないかと思います。
いずれにしても口にしないに越したことはありませんので、できるだけ添加物が少ない食品を選ぶのがいいでしょう。
特に「香料」と「着色料」は何が使われているかわかりませんし、品質をごまかすための添加物です。
精米改良剤を使わないと美味しそうに見えないお米も避けたいですね。
ジュースやお菓子、コンビニ弁当やおにぎりをなるべく食べないようにするのが一番かと思います。
ただ、添加物を完全にゼロにするのは難しいですし、忙しい時にはコンビニやスーパーの惣菜、冷凍食品などは大変便利です。
添加物を正しく理解して、必要以上に恐れず、適度に便利さの恩恵を受けつつ、できるだけ摂らないように気をつけたいと思います。