長日植物・短日植物・中性植物の違いをわかりやすく解説

多くの植物は、花を咲かせ、種を作ることで、子孫を残していきます。
種が発芽し、成長していくためには、気温や日照時間などの条件がそろわないといけませんので、植物にとって「いつ花を咲かせるか」は重要なポイントです。

適切な開花時期に花を咲かせるために、植物たちが反応しているのが「日」の長さ。
正確には日中の明るい時間の長さではなく、夜の暗い時間の長さに反応しているのですが、夜が短く、日が長くなる頃に花を咲かせる植物を「長日植物(ちょうじつしょくぶつ)」、夜が長く、日が短くなる頃に花を咲かせる植物を「短日植物(たんじつしょくぶつ)」と言います。

この記事では「長日植物」と「短日植物」、そしてそのどちらでもない「中性植物」についてわかりやすく解説します。

植物は暗期の長さに反応している

植物が日の長さに反応して開花をコントロールすることを、「日長反応(にっちょうはんのう)」と言います。
言葉からすると日中の明るい時間に反応しているように思えますが、植物が反応するのは夜の暗い時間(暗期)。
つまり、昼の長さではなく、夜の長さが植物の開花を左右します。

なぜ昼ではなく夜なのかと言うと、夜は確実に暗くなるからです。
昼は天気によって暗くなったり、影になって日が当たらなかったりと、明るい時間が安定しません。
ですが夜は、どんな天気でも、どの場所でも、夜になれば必ず暗くなりますよね。

また、気温についても、夏でも涼しい日があったり、冬でも暖かい日があったりと、大きく変動します。
そのため、植物が季節を知るには、気温の変化でも日照時間の変化でもなく、暗期の時間の変化に反応するのが確実なんです。

長日植物(ちょうじつしょくぶつ)とは

長日植物とは、日が長くなる、つまり、暗期が短くなる頃に開花の準備が始まる植物のことです。
冬至から夏至にかけて、夜がだんだん短くなり、暗期が12~14時間以下になると花芽が形成され始めます。

植物が花芽をつけるかつけないかの境目となる暗期の長さを「限界暗期」と言い、限界暗期の長さは植物によって異なります。
例えば、菜の花に似た「シロガラシ」という植物は、限界暗期が12時間。
夜の長さが12時間以下になると開花の準備が始まる長日植物です。
日本で暗期が12時間以下になるのは、春分の日を過ぎた頃。
3月下旬頃から花芽が形成され、菜の花のような黄色い花を咲かせて、春の訪れを教えてくれます。

このように、長日植物は春に花を咲かせる植物であり、春は昆虫たちも活動を開始する季節でもあります。
昆虫たちに受粉を助けてもらって種を作り、夏に枯れ、秋にまた種が発芽し、冬を越して春に花を咲かせる、というサイクルを繰り返して繁殖していくんですね。

長日植物の例

シロガラシ、カーネーション、宿根スイートピー、ペチュニア、アヤメ、ダイコン、アブラナ、キンギョソウ、ディル、ヤグルマギク、ヒヨス、ホウレンソウ

短日植物(たんじつしょくぶつ)とは

短日植物とは、日が短くなる、つまり、暗期が長くなる頃に花をつける植物のことです。
夏至から冬至にかけて、夜がだんだん長くなり、暗期が9~11時間以上になると花芽が形成されます。

短日植物は秋に花を咲かせる植物が多いのですが、日本では夏至でも暗期が9時間以上あるため、夏に花が咲く短日植物もあります。
その代表格がアサガオ。
アサガオの限界暗期は9時間で、暗期が9時間以上で花芽をつけ始めます。
そのため、アサガオは7月8月の夏真っ盛りでも花が咲くんですね。

ただし、暗期が同じ9時間でも、夏至の前にアサガオの花が咲くことはありません。
夜の長さが同じでも、「暗期がだんだん長くなっている」という条件が必要なのです。
夏至までは暗期がだんだん短くなっている時期であるため、アサガオは「今じゃない」と判断し、花を咲かせるぐらいに成長していても開花準備は始まりません。

ちなみに、短日植物の多くは、夜に短時間でも光が当たると開花しなくなってしまいます。
短日植物は赤道付近に分布している植物が多く、緯度が低い地域では1年を通して日長の変化があまりありません。
わずかな日長の変化にも反応できるよう、光に敏感になっているからだと考えられています。
短日植物の花を咲かせるには、街灯や家の明かりなどの影響がない場所に植えるのがいいでしょう。

短日植物の例

アサガオ、キク、コスモス、ポインセチア、シャコバサボテン、オナモミ、イネ、タバコ、ダイズ、クウシンサイ

中性植物(ちゅうせいしょくぶつ)とは

長日植物と短日植物のいずれでもない、「中性植物」と呼ばれる植物もあります。

中性植物とは、日長反応をしない植物のことです。
植物全体の4分の1近くが中性植物であるといわれており、暗期の長さに関係なく花芽を作り、花を咲かせます。

例えば、一年を通して花を楽しめる四季咲きのバラは中性植物に分類されます。
家庭菜園の定番であるトマトやキュウリも、夏至の前でも後でも花が咲くので中性植物です。

ヒマワリは短日植物のアサガオと同じ頃、7~8月の真夏によく見られる印象がありますが、開花の条件に必要なのは日長ではなく気温です。
夏至前でも気温が高ければ花芽を形成するため、短日植物ではなく中性植物といえます。

中性植物の例

バラ、トマト、キュウリ、ヒマワリ、ゼラニウム、ベゴニア、センパフローレンス、シクラメン、エンドウ

桜は中性植物なのか

ちょっとややこしいのが桜です。
桜は春に開花しますが、花芽を形成するのは夏。
冬に開花の準備が始まる長日植物とは異なります。
しかし、ソメイヨシノは夏至前の6月に花芽ができ始めるという報告もあり、短日植物ともいえません。

桜の花芽は気温が下がると休眠状態となり、そのまま冬を越して、春に気温が上がると開花します。
桜前線が南から北へと移動するのは、気温の上昇が開花のトリガーとなっているからでしょう。
秋にいったん涼しくなった後、暑さがぶり返した時に桜が開花する「狂い咲き」という現象も、気温の変化に反応しているといえます。

ただ、結局のところは夏に花芽が形成される理由もよくわかっていないようで、より複雑なメカニズムがあるのではないかと考えられています。
こんなに身近な桜でもわからないことが多いのは、植物には人間の想像を超える不思議な力があるのかもしれませんね。