つるむらさきは何科?英語・中国語の意味、原産地と歴史を考察

つるむらさきは、ツルムラサキ科ツルムラサキ属の植物です。

つるむらさきの英語名は「Indian Spinach(インドのほうれん草)」、または「Malabar Nightshade(マラバールのナス科植物)」。

マラバールはインド南西部の地域の名称ですので、どちらもインドに縁のある名前です。

つるむらさきの中国語名は「落葵(luo kui)」。

日本へは中国から伝わったと考えられますが、日本語は「蔓紫(つるむらさき)」と名付けられました。

この記事では、つるむらさきの生物分類と英語名・中国語名の意味、原産地と歴史について考察します。

つるむらさきの生物分類

つるむらさきの生物分類は以下の通りです。

  • 界:植物界(Plantae)
  • 門:被子植物門(Magnoliophyta)
  • 網:双子葉植物綱(Magnoliopsida)
  • 目:ナデシコ目(Caryophyllales)
  • 科:ツルムラサキ科(Basellaceae)
  • 属:ツルムラサキ属(Basella)
  • 種:ツルムラサキ(Basella Alba)

ツルムラサキ科には、

  • ツルムラサキ属(Basella)
  • アカザカズラ属(Anderera)
  • ブッシンガルティア属(Boussingaultia)
  • ウルーコ属(Ullucus)

の4つの属があります。

つるむらさきと同じく、つる性で粘り気のある葉が特徴の「オカワカメ」は、ツルムラサキ科アカザカズラ属の植物です。

ツルムラサキ科を含む「ナデシコ目」には、「ヒユ科」もあります。

ヒユ科を代表する野菜と言えば「ほうれん草」。

つるむらさきは英語で「Indian Spinach(インドのほうれん草)」と呼ばれますが、つるむらさきとほうれん草は違う種類の野菜です。

つるむらさきの英語名と原産地

つるむらさきが英語で「Indian Spinach(インドのほうれん草)」と名付けられたのは、食味がほうれん草に似ているからだと思われます。

つるむらさきには「赤茎種」と「緑茎種」の2種類がありますが、特に緑茎種はほうれん草の味に近いです。

茹でるとまさにほうれん草の見た目になるので、「ほうれん草のおひたし」と言われて出されたら気づかないと思います(笑)。

つるむらさき(緑茎種)のおひたし

つるむらさきには「Malabar Nightshade」という英語名もあります。

「Malabar(マラバール)」は、インド南西部のアラビア海に面した地域の名称。

インドでは古くから野菜として食されており、伝統医療である「アーユルヴェーダ」でも薬草として利用されてきました。

つるむらさきの原産地は東南アジアの熱帯地方とされていますが、中でもインドが原産地に一番近いのではないでしょうか。

「Nightshade」はナス科の植物全般を表す言葉でありますが、「イヌホオズキ」を指す場合もあるようです。

つるむらさきの実とイヌホオズキの実の色が同じで似ていることから、「Malabar Nightshade」と名付けられたのかもしれません。

つるむらさきの実
イヌホオズキの実

つるむらさきの中国語名の意味

つるむらさきは中国語で「落葵(luo kui)」と言います。

「落」は日本語と同じく「落ちる」を意味する漢字です。

「葵」は「花の大きな一部の草本植物の名称」として用いられる漢字で、「向日葵(ひまわり)」でイメージできるかと思います。

でも「落ちる向日葵」って、つるむらさきの見た目とまったく違いますよね⋯⋯。

「落葵」が何を意味するのか、そのヒントになるのが『本草和名(ほんぞうわみょう)』という書物です。

平安時代、918年に編纂された薬物事典で、「落葵」の項目に和名「加良阿布比(からあふひ)」と記されています。

加良(から)は「唐」、阿布比(あふひ)は「双葉葵(ふたばあおい)」のことで、「中国の双葉葵」という意味です。

こちらが双葉葵の葉っぱですが、つるむらさきとよく似ていますよね。

ふたばあおいの葉

このことから、つるむらさきの中国語名「落葵」は、「落ちる双葉葵」を意味しているのではないかと思います。

なぜ「落ちる」なのかは、双葉葵が自立するのに対して、つるむらさきは何かにつるで巻き付かないと自立できない(落ちる)からではないでしょうか。

つるむらさきの歴史

つるむらさきの原産地とされる東南アジアの熱帯地域では、2000年以上前から食されていたと考えられています。

アーユルヴェーダや漢方でも、薬草として古くから利用されていました。

日本では前述した『本草和名(ほんぞうわみょう)』で初めて登場しますが、平安時代に栽培されていたかどうかは不明です。

「つるむらさき」という言葉が出てくるのは江戸時代。

寛永8年(1631年)に出版された『新刊多識編』という書物に、「豆留牟良佐岐(つるむらさき)」と記されています。

この頃には日本にも渡来していたようで、主に観賞用として栽培されていたそうです。

食用としての栽培が広まったのは割と最近のことで、1970年代から。

1972年の日中国交正常化を機に中国野菜ブームが起こり、つるむらさきを食用に育てる人が増えていきました。

現在では健康野菜として注目されていますが、まだまだメジャーな野菜とは言えないと思います。

私も家庭菜園を始めるまで、食べたことも聞いたこともなかったですし(笑)。

栄養豊富で美味しい野菜ですので、もっともっと広まればいいなと思います。

つるむらさきは家庭菜園におすすめ

つるむらさきはスーパーであまり見かけないので、自分で育てるのがオススメです。

夏の暑さに強く、生育旺盛で虫も付きにくい、最強の夏野菜。

我が家では毎年、こぼれ種から勝手に生えてきます。

完全な放任栽培で多収穫。本当にありがたい野菜です。

プランターでも育てられるようですので、ぜひチャレンジしてみてください♪